ソフトバンクGは、2016年7月18日、英アーム・ホールディングス(ARMH)の買収を発表しました。
ARMHは、英国のケンブリッジに本社を置く、スマートフォンチップでは、「世界中の97%がARMHの設計を搭載」(孫氏)という、独占企業です。
ソフトバンクG によるARMHの買収総額は3.35兆円にも上ります。
市場価格から42%のプレミアム乗せた買収価格ですが、孫社長は
「これから大きく成長するIoT(インターネットオブシングス)社会の中で、ソフトバンクとARMは次のパラダイムシフトをけん引していく」
と語っています。
ARMHは、自らは製品を作らないため一般消費者の認知度こそ低いものの、IoT時代の本命ともいわれる企業です。 投資先としても最高ランクに違いありません。
にもかかわらず、ソフトバンクGの株価は、発表によって1株6000円から5400円に10%の急落となりました。
これはひとえに、ソフトバンクGの有利子負債額(借金)を不安視した下落です。
ソフトバンクは、確かに有利子負債11兆9224億円(2016年3月末連結)、支払利息4612億円(2016年3月末連結)と巨額の借金があります。
なお今回のARMH買収では、新たな借金をせずとも手許資金からまかなえる、と説明されています。
これを簡単に検証してみましょう。
ソフトバンクGの経常利益は1兆57億円(2016年3月末連結)、総資産経常利益率は4.82%(2016年3月末連結)となっています。つまり全ての資産を使って5%近い利益を稼ぎだしていることになります。
有利子負債(借入)の平均利息は、3.8%です。(上述の利息4612億円÷有利子負債11兆9224億円)
つまり、3.8%の利息を支払っても4.8%の利益を上げており、借りれば借りるほど利益が拡大します。
買収される側のARMHは、2011年から2015年にかけて収入が毎年20%超伸びています。
これを現状の平均利息3.8%と比べても、足元でも充分なリターンといえます。
もっとも、孫社長はARMHの将来性に投資したのであって、足元にはさほどの関心はないかもしれませんが。
ARMHは、有望な投資先であるにもかかわらず、買収側のソフトバンクG株は急落しました。
一つの理由は、前回の大型買収であるスプリントが、想定よりもパフォーマンスが低いことにあるでしょう。
しかし根底の心理に、「借金に対する罪悪感」があると感じます。
・きちんと利息を払えるなら、元本を返していなくても特段の問題はない
・元本を返済する場合でも、少しずつ返していくものであって借換えもできる
借金は、単なる資金調達の手段の一つにすぎません。
ARMHの買収で、ソフトバンクが借金に押しつぶされることはないでしょう。