1 信用保証協会の保証付き融資のしくみとテクニック

創業者や開業者を対象にした融資は、事実上、日本政策金融公庫または信用保証協会の保証付融資しかありません。
ここでは、信用保証協会の保証付融資について、そのしくみと借入テクニックについて説明していきます。

信用保証協会は、銀行のように直接の融資をするのではなく、銀行が行う融資に対して保証をしてくれる公的保証機関です。
中小企業は大企業に比べて体力が弱く、民間の銀行は中小企業への融資に積極的ではありません。
信用保証協会の保証が付いていれば、もし貸し倒れとなっても、民間の銀行は信用保証協会に代わりに弁済してもらえます。

民間の銀行としては、貸倒れのリスクが無くなるので安心して中小企業にも融資ができるのです。
信用保証協会は、完全に民間任せにできない、中小企業の融資制度を支える国の制度なのです。
特に創業や開業に関しては、積極的に取り組むように国から信用保証協会に指示がされています。

信用保証協会の保証付融資では、保証ができるかどうかによって融資そのものが決まります。
信用保証協会に保証を断られた会社には、民間の銀行は融資を行いません。

信用保証協会は都道府県ごとに設置されており、それぞれは別組織です。
それぞれの持つ審査の基準は同一ではなく、信用保証協会ごとに判断基準が異なります。
信用保証協会が重複する地域にあるならば、創業や開業に積極的な信用保証協会を選ぶのがテクニックです。

信用保証協会には政策的な目的があるため、次のような制約があります。
(1)中小企業者に限られ、特定の業種は除かれる
(2)保証の上限が低い
(3)信用保証料が必要
(4)保証人が必要(社長のみ)

 

(1)中小企業者に限られ、かつ特定の業種は除かれる

中小企業者というのは、サービス業であれば資本金5000万円以下または従業員100人以下の会社及び個人をいいます。(中小企業基本法)
ですから創業者や開業者はもちろん該当します。

特定の業種として、農林・漁業、遊興娯楽業のうち風俗関連営業、金融業、学校法人、宗教法人、非営利団体などは、対象外となります。
実際に許認可を受けていなくても、法人登記の事業目的の中にこれらと紛らわしい業種が入っていると融資を受けられない可能性があるので気をつけてください。

 

(2)保証の上限が低い

創業や開業の場合の保証限度額は、高くありません。
創業や開業の場合、制度上は東京都では限度額は2,500万円、特別区はおおむね1,500万円ですが、実際の保証額の上限は1000万円程度の感覚です。

 

(3)信用保証料が必要

信用保証協会の保証はタダではありません。
融資をした銀行には利息を払いますが、これとは別に保証料がかかります。
保証料は、借り手の信用リスクが高いほど高くなる仕組みです。
ただし、創業や開業の場合は、過去の実績による信用リスクを評価できないため、一律の低めの保証料に取り決められています。
「むしろ創業者や開業者のほうが審査は通りやすい」といわれるのは、国の後ろ盾があるためです。

 

(4)保証人が必要(社長のみ)

信用保証協会は、銀行が会社に融資したお金を保証します。
それと同時に、会社の創業者や開業者に対しても、貸倒に備えて個人保証を求めます。
信用保証協会には、無保証という選択肢はありません。
もっとも、国の政策機関ですから原則禁止されている第三者の保証人までは求めません。
あくまでも個人保証を求められるのは社長だけですから安心してください。

 

コラム 民間銀行と信用保証協会のリスク共有
銀行が貸したお金が貸倒れとなった場合、信用保証協会は融資額の80%を銀行に対して弁済します。残りの20%は、銀行自身が被ることになります。
これを責任共有制度といいます

過去には信用保証協会が100%弁済していましたが、あまりにもリスクを引き受け過ぎだということで、残りの20%は案件を持ち込んだ銀行の責任となったようです。

しかし、創業や開業の融資では今でも特例として、信用保証協会が100%のままです。

民間の銀行にとって、創業や開業の融資はノーリスクで金利が入るため、おいしい融資といえます。
創業者や開業者にとっては、保証料が安いという特典もあります。これは、創業や開業に限り特別な「責任共有外保証料率」が適用されるためです。

民間の銀行にとっておいしい融資であり、創業者や開業者にとっては保証料が安い。
このため創業や開業期は、信用保証協会の保証付融資がとても借りやすい時期なのです。