社長は、事業にかける「熱い思い」で関係者を動かし、社員をリードしていく立場ですが、
熱い思いの一方で、きわめて冷静に事業の成功可能性を分析しなければなりません。
そのような2面性が、中小企業の社長には必要です。
事業の成功可能性を冷静に分析するためには、我流ではなく定評のあるSWOT分析を使うのが良いでしょう。
SWOT分析は認知度も高いのでこれを使っているだけで、“ちゃんと分析”していると好評価を得られます。
SWOTは、強み(STRONG)、弱み(WEAK)、機会(OPPORTUNITY)、脅威(THREAT)の頭文字です。
外部環境と内部分析をマトリックスにして作成します。
外部環境 | 機会(OPPORTUNITY) | 脅威(THREAT) |
内部分析 | 自社の強み(STRONG) | 自社の弱み(WEAK) |
内部分析は、財務視点、顧客視点、業務プロセス視点、学習と成長視点、の4つに細分化する方法もあります。
SWOT分析から得られるものは、
「変化する環境のなかで生き残る術」
です。
外部環境とは、市場の変化をもたらすさまざまな要因です。
政治的、制度的、科学技術、嗜好やライフスタイルといったありとあらゆるものが対象となり得ますが、その中から業界に影響がありそうなものを選びます。
外部環境のうち「機会」は、新たに参入しまたは拡大するきっかけとなる事柄です。
外部環境のうち「脅威」は、マーケットが縮小するきっかけになるような事柄です。
外部環境が変化すれば、同業であれば同じ影響を受けます。
その変化に最も早く対応できた会社は、最大の利益を得られ、順応できない会社は淘汰されます。
内部分析では、会社内部の強みや弱みを書き込みます。
技術、ノウハウ、経験、資格があることが事業化のきっかけにだと思いますから、強みがあればここはアピールにもなります。
一方で中小企業は慢性的に人材不足状態ですからスタッフの確保は多くの場合、弱みでもあります。
事業リリース後、円滑に成長軌道にのせるための人材確保ができるかどうか、その答えは用意して下さい。
それでは、事例にあてはめてみます。
あるコンピュータソフト開発会社のケースです。
外部環境 | 機会(OPPORTUNITY) | 脅威(THREAT) |
・マイナンバー制度などインフラ需要が旺盛 ・セキュリティ対策の需要が旺盛 ・スマートフォン利用者急拡大 |
・安価なオフショア開発やクラウドサービスとの競争 ・顧客基盤が弱い ・人材不足が常態化 |
|
内部分析 | 自社の強み(STRONG) | 自社の弱み(WEAK) |
・社長の技術者としての評価が高い | ・資金力が弱い ・技術者のみで営業力が弱い |
それでは、機会と脅威がある中で、自社の強みを伸ばし、弱みをカバーするための戦略を考えます。
(1)自社の強みを機会に生かす戦略
・大手ソフト開発会社からの受注は引き続き安定が見込めるため、技術力を活かしつつ効率的な開発体制をつくる。
・高い採算が見込める中小企業向けのアプリケーション開発を進める。
(2)脅威に対抗する戦略
・安価なオフショア開発やクラウドサービスと直接競合する分野には進出せず、日本国内で求められる付加価値をつけた商品の2次開発にとどめる。
・顧客基盤の弱さに対しては、既にあるホームページに加えて、企業案内や商品パンフレットを上質な紙媒体で作成し、IT化が進んでいない中小企業向けに売り込む。
・人材不足に関しては、技術者の中途採用の通年募集に加え、専門学校の新卒採用に取り組む。
(3)自社の弱みを克服する戦略
・資金力の弱さについては、かねてから打診があった大手ソフト開発会社からの出資を受け入れる。なお経営の自主性が失われない程度の出資比率に抑える。大手会社の出資をテコに、低金利の借入で資金調達する。
・技術者のみで営業力が弱い点については、受注が旺盛なことから当面は技術者優先の採用方針は変えられないため、営業受託会社の活用を検討する。また受注業務に支障が無い範囲で、技術者向けに営業研修を企画する。
説明のため内容は簡素にしましたが、要領はおわかりいただけたでしょうか。
このようにSWOT分析で視覚化することによって、脅威と弱みを克服して会社が攻める戦略を練ることができます。