商品やサービスの設計ができたら、マーケット調査とターゲットを確認し検証します。
この検証は、「商品サービスの設計」と並行して行ってもかまいません。
どんなに良いと思う商品サービスでも、売れなければ事業の意味は全くありませんから、マーケットは存在するのか、ターゲットとする顧客層に受け入れられそうか、充分に検証されなくてはいけません。
巨大なマーケットで万人向けの商品やサービスを売り込むためには、強いブランド力と豊富な資金が必要です。
しかしそれは、中小企業の取ることができる戦略ではありません。
中小企業がとるべき戦略は、特定のマーケットに絞ってその中の同質の集団に対して販売するニッチ戦略です。
ニッチ戦略は、次のSTPプロセスで進めると成功の確率が高くなります。
STPのSはマーケットの細分化、Tはターゲットの集中、Pはポジショニングの意味です。
[S]マーケットの細分化
[T]ターゲットの集中
[P]ポジショニング
[S]マーケットの細分化
顧客は、ニーズを満たせる商品やサービスを求めています。
ニーズは、単に利便性を満たすものから、強い欲求を生む嗜好性のあるものまでさまざまです。
ニーズは、社会の高度化とともに多様化し変化しています。
「ハリネズミを膝にのせて撫でられる」というだけで、ヨーロッパやオーストラリアから客が集まるカフェが六本木にあります。社会はそれほど多様化しているのです。
多様化は、中小企業にたくさんのビジネスチャンスを与えてくれます。
多様化した社会では、むしろフットワークに優れる中小企業のほうが、勝利者となる可能性が高いかもしれません。必要なのは多様化する顧客ニーズを柔軟に拾い上げることです。
マーケットをある特定のカテゴリーで切って細分化し、その中で同質的な集団に対して集中して販売することができれば、中小企業にも勝算はあります。
カテゴリーの切り口として次の5項目のいずれかを参考にしてください。
<地理的> 地域、人口密度で絞り込む
<人口動態> 年齢、性別、家族構成で絞り込む
<心理・行動> ライフスタイル、嗜好傾向、価値観で絞り込む
<商品> 使用パターン、ユーザータイプで絞り込む
<加工度合> 原材料、中間材、完成品で絞り込む
[T]ターゲットの集中と確認
中小企業は、強みを発揮できるマーケットや細分化したカテゴリーに特化して、そこに集中して取り組むべきです。
バルミューダという新興家電メーカーのトースターは、3万円を超える高価格にもかかわらず良く売れています。単機能のトースターは3千円以内で買えますから、価格差は10倍以上です。売れる理由は、パンを焼く工程に水分を吹きかけることで、いつもの食パンが焼きたてのようになるからだそうです。
バルミューダは、ユニークな家電で人気ですが、廉価品の購買層は顧客ターゲットにせず、髙くてもユニークな家電を求める購買層をターゲットに絞って、成功しています。
ニッチなマーケットの顧客をターゲットにする場合、次のようなプロセスで確認すると良いでしょう。
・有望な顧客集団を抽出
・参入プロセス検討
・事業の効果を予測
強みを発揮できる特定のカテゴリーに絞るのが成功のカギですが、商品やサービスが斬新であるほど、ターゲットとする顧客層とズレが生じがちです。 斬新な商品やサービスである場合には、隣接するマーケットのターゲット顧客層からも探ると良いでしょう。
[P]ポジショニング
どのようなマーケットを絞ってもある程度の競争は避けられません。
ニッチマーケットで先行できたとしても、いずれは競合者が現れます。
競合他社に先んじ続けるためには、財務、技術、ノウハウを磨き続ける必要があります。
そして忘れてはいけないのは、細分化されたマーケットのなかで存在感を示すことです。
ポジショニングで優位となれば、無駄な競争を減らすことができます。
逆に他社が優位なポジショニングにあるかどうかという視点で調査してみると、競争状態となったときのシミュレーションの精度が上がります。
・さらなる細分化、ターゲットの変更、差別化要因の洗い出し
・撤退基準の設定
「マーケット調査」とターゲットの確認を終えたら、再度[1]「商品やサービスの内容」の明確化に戻って整合が取れている再度チェックしてください。