中小企業が新商品や新サービスを開発するきっかけは、業務の経験から、あるいは顧客からの要望があって、というのが多いでしょう。
異業種とのコラボにより、新ジャンルの新商品や新サービスが生まれることもあるでしょう。
業務の経験から生まれる工夫や改良がベースであれば、ある程度、“感”でカバーでき、空振りは少なくなります。
全く未経験の分野でも、フランチャイズで事業展開する方法もあります。
フランチャイズは、ノウハウとマーケットリサーチをパッケージしたものですから大外れはしません。
(ただし、大当たりもしません)
成熟した社会では、今までにある商品やサービスの工夫や改良、低価格での提供といった展開が主流です。
その中で、商品やサービスを打ち出していくには、次のプロセスで検討していくと効率的です。
商品やサービスの検討プロセス
(1)アイデアを記録する
(2)商品やサービスのラフイメージを作る
(3)従来の商品やサービスとの違いを定義する
(4)マーケットニーズとターゲット顧客層の仮説をたてる
(5)競合他社との差別化と価格の想定
(6)商品、サービスの設計
商品やサービスを考案しただけですぐに事業化するのは危険です。
特にマーケットニーズとターゲット顧客層の検証は省いてはいけません。
もし事業化を急ぐならば、少なくとも「マーケット調査」は、行ってください。
事業の立ち上げ期は、売上が追いついてきませんから、少しの読み違いで資金が底をつく危険があります。
(1)アイデアを記録する
既にある商品やサービスは、徐々に競争者が増え次第に価格が下がっていきます。
後追いでマーケットに割って入るには、低価格を打ち出すか、新機能や付加価値で勝負することになります。
付加価値といっても、従来品やサービスの小改良や工夫で特色を打ち出せれば充分と思います。
日々の業務経験や他業界との連携を通じて、良いアイデアが浮かんだら逐一記録しておきましょう。
これはサラリーマンであっても可能なことです。
(2)商品やサービスのラフイメージを作る
書き留めたアイデアを元に、商品であればカタチや機能をイラストにしたり、サービスであればロールモデルやビジネスフローにまとめます。少しずつ変化を持たせたパターンをいくつか作ることをお勧めします。
この段階では、自分で事業化できそうだと思えれば充分です。
(3)従来の商品やサービスとの違いを定義する
事業で成功するためには、商品やサービスが何らかのかたちで優れている必要があります。
それは、商品やサービスそのものであったり、価格競争力であったり、販売方法であったり、さまざまです。
この成功要因のことを、キーサクセスファクターといいます。
キーサクセスファクターが明確であれば、周囲の理解が得られやすく、かつ事業が失敗する確率をさげることができます。借入金でもがぜん有利になります。
キーサクセスファクターは、例えば、
・有利な調達ルートにより独自販売が可能、あるいは低価格での提供が可能
・嗜好品であればデザイン、買い回り品であれば機能
・特定のターゲットに特化した特別な販売促進手法
・地元密着型の小売りやサービスなら、顧客との密着
・特許、実用新案を持っている
といったもので、少なくとも一つは明確にして事業計画書に書き込んでおきましょう。
(4)マーケットニーズとターゲットの仮説をたてる
商品やサービスのイメージと成功要因を定義したら、マーケットニーズとターゲット顧客層の仮説をたてます。
仮説はこの段階では感覚的なものでかまいません。
仮説をたてたらあらためて商品やサービスをフィットさせるための修正を加えます。修正を加えた商品やサービスは、再度マーケットニーズとターゲット顧客層の仮説と検証します。
何度かこの作業を繰り返して、いくつかのパターンを作ります。
この段階で、仮説を[2]「マーケット調査」で検証してもかまいません。
商品やサービスが、マーケットニーズとターゲットにフィットしているかは事業が成功するための最重要ポイントです。
(5)競合他社との差別化と価格の想定
商品やサービスは、付加価値、販売方法、提供場所、そして価格のどれかが他社に比べて優れていなければいけません。
商品性や付加価値は、少なくともターゲットとする顧客層のニーズを満たすものでなければ、相手にされません。
ただし、付加価値が高めすぎると価格競争力を失い、マーケット内のポジションが弱くなるので注意が必要です。
特に価格戦略は、中小企業にとって重要な差別化要素です。
中小企業はブランド力も営業力も劣りますから、競合他社より価格を安くするための工夫が必要です。
もっとも、採算割れで商品やサービスを提供すれば、会社は存続できません。
それは、価格により会社の儲けが決まるからです。
(7)商品やサービスの設計
商品やサービスは、明確かつわかりやすく事業計画書に書かれていなければいけません。
商品やサービスは、どのようにして顧客に提供され、どんな効用が顧客にあるかなど、嗜好性やメリットも明確にしてください。商品であればデザインも必要です。
商品やサービスがわかりにくいものであるならば、商品化やサービスのリリースは遠いままです。
金融機関からの借入も可能性が低くなります。
なお、商品やサービスのリリース後であっても顧客にあわせて修正する柔軟さも必要です。
「この商品の良さはいずれ理解される」と頑なになると、大抵は行き詰まります。
顧客に直接聞いてみる、アンケートを取る、顧客との対話から商品やサービスを改善していかなければ、生き残れません。