金融機関に提出した事業計画書は、金融機関との約束といえば大げさですが、それは自社のためでもあります。 借入目的がきっかけとしても、事業計画書を経営に役立てないのはもったいないです。
事業計画書には次のような役割があり、計画通りに実行できれば自然と優良な会社に変化します。
- 1.事業を客観的に見つめることで的確な判断を下せる
- 2.社員と目標を共有することで一体感が生まれる
- 3.借入が円滑にすすむ
1.事業を客観的に見つめることで的確な判断を下せる
中小企業の社長の多くは、事業のコンセプト、商品やサービスのセールスポイント・ウィークポイント、販売や営業の方法まで一通りの情報を頭の中だけにしまっています。
業務情報は、頭の中にあるだけでは充分な検討がされず、偏りが選択ミスの原因となります。
事業計画書で視覚化することにより、より精度が高く変化にも柔軟な対応が可能になります。
例えば既存の商品の改良についてアイデアが浮かんだとき、なにかしらメモに走り書きすると思います。
アイデアは普段の生活や仕事の中で、脈略なく浮かんでくるものですし、あるアイデアと別のアイデアを一つにまとめようとするときには、図やイラストやコメントを使って視覚的に考えようとします。
事業計画はアイデアの集合体であって、会社の事業活動を視覚的にとらえるものでもあるのです。
事業計画書は、ターゲットとする市場、顧客のニーズ、ポジショニング、競合他社といった事業に関するさまざまな情報とそれに対する対処法が関連付けられて書かれた、“メモ”と考えてください。
事業計画書に情報が網羅されていれば、攻めるべきポイントや攻め方、商品やサービスの改良といった戦略を客観的に見つめることができます。
事業環境は常に動いています、今まで通用したことが通用しなくなったり、その逆もあります。
事業計画書を視覚的にとらえることで、市場や顧客の変化にしなやかに対応することができるのです。
2.社員と目標を共有することで一体感が生まれる
「社員は目標をもって、自発的に動いて欲しい」
社員を持つ社長の共通の悩みです。
なぜ社員は社長の考えや熱い思いをわかろうとしないのか?
それは、社長の伝え方に問題があるのかもしれません。
・気の向くまま、とりとめなく指示を出す
・気を抜かずに! など指導があいまい
・ノルマがコロコロ変わる。ノルマを達成できないとキレる
・強圧的、脅し寸前の口調で激を飛ばす
こうなってくると負のスパイラルに陥り、どんどん会社の雰囲気も業績も悪くなります。
事業計画書を使うと、社員が自発的に動き会社を“稼ぐ集団”へと変化させることが可能です。
“稼ぐ集団”とするために、事業計画書で掲げた会社の目標をそれぞれの社員に割り振るのです。
すべての社員は自ら創意工夫して、割り振られた目標の達成に努め、目標の進捗も社員自身で管理します。
これは、目標管理という社員に目標を設定し管理する手法です。
中には、経験不足や意識の引くさから目標に届かない社員も出てきます。
そのような場合でも、
「目標を達成するためには、ここを改めなさい」
と指導すれば、社員も納得しやすく効果的です。
社長が激を飛ばしても、なんとなく社員を思っての言葉のように聞こえるのです。
目標管理は、ドラッカーが組織管理で説いた方法で、実際に大企業から中小企業に至るまで多くの会社がこの方法を使って成功しています。
“目標管理の導入”自体が、事業計画書のアピール材料になります。
事業計画書を作成したら、ぜひ目標管理とリンクさせ、業績向上を確実なものにしてください。
ただし、次を守らないと社員から不満が出やすいので、気を付けてください。
・目標を達成できれば、待遇として社員に返すこと
・目標の割り振り方は、できるだけ公平かつオープンにすること
3.借入が円滑にすすむ
知人からお金を貸して欲しいといわれたときに、何も言わずにポンと出すでしょうか?
「何に使うのか? いつ返してもらえるか?」
必ず聞くと思いますし、それは金融機関も同じです。
金融機関は、決算書で正常貸出先と判定される会社には、事業計画書の提出までは求めません。
正常先は、貸倒れの可能性が低いからです。
事業計画書を銀行が求めるのは、その会社の決算書が見劣りするからです。
もちろん銀行には、融資をしないという選択肢もありますが、一方で銀行を監督する金融庁からは「金融検査マニュアル」を通じて、事業計画書を活用して“中小企業を救済しなさい”、と指導されています。
事業計画書があると借入で有利になるのはこのような理由があるからです。
事業計画書があれば、信用保証協会や銀行による評価が底上げされますから、ぜひ積極的に、決算書や保証申込書に添付して下さい。